【完】向こう側の白鳥。
だけどある程度近づいたところで、柚子の隣にいるのが誰なのか気づく。
体中の体温が一気に下がった気がして。
手に汗をかいたのにも構わず、柚子の手を引いて自分の方へと引き寄せた。
「柚子に、何の用……?」
心の底から、嫌悪感と焦りを感じる。
目の前にいる人物を目が捉えては、呼吸がままならない。
「お、紫苑じゃねえか。久々〜。梅芽が死んでから屍みたいになってたけど、もう大丈夫なんだ?」
“梅が死んだ”
その事実を軽々しく口にするコイツが、殺したいほど憎い。
「それってもしかして、柚子のおかげ? 梅芽の代わりにでもしてんの?」