【完】向こう側の白鳥。
新間俊二(あらま しゅんじ)。
平沢高校卒業生で、今は大学二年生。
俺が世界で一番、嫌う人物。
「一ノ宮、先輩……?」
「あ、悪い……。」
抱きしめたままだった柚子を腕から解き、彼女の頭を撫でる。
不安そうな目をジッとこっちへ向けられ、こんなときだというのに心臓が軽く高鳴ってしまう。
「先輩、俊二と知り合いなんですか?」
“俊二”……?
「……先輩だよ、新間先輩は。」
先輩なんて、思いたくもないけど。
「柚子、お前紫苑と付き合ってんの?」
「……俊二には関係無い。」
柚子の手が微かに震えている。
ソッと、その手を握った。