【完】向こう側の白鳥。
恐る恐る体を離して、昨日ぶりに柚子の顔を見る。
……昨日は、本当に焦った。
柚子が帰ってから十分ぐらいして、俺も部活を終える、柚子の後を追うように。
それは帰り道、柚子が何か事件に巻き込まれるといけないから。
別れてからも俺は、柚子を忘れられなかった。
……竜や桂木先輩の言う通り、今でも俺は梅芽が好きなのかも知れない。
だけど決して、柚子を梅芽の代わりとして見たことは無かった。
柚子は柚子として、俺は彼女が好きだ。
廊下で倒れていた柚子を見かけたとき、心臓が止まると思った。
冷汗が体中から吹き出して、四肢がガタガタと震えそうになる。