【完】向こう側の白鳥。
保健室の先生は出張でいないと知っていたから、柚子を背負って職員室へと急いだ。
中にいた柚子の担任、尾崎先生に保健室を開けてもらって柚子を寝かせ。
尾崎先生に軽い寝不足だろうと言われたとき。
そのとき、やっと呼吸が楽になった。
ほんの短なその間、俺は息をしてなかったんじゃないかな、とまで思う。
少しの間柚子の様子を見守って。
目を覚ましたとき、隣に俺がいると困るだろから。
柚子が目を覚ます前に病室を出た。
席を立つ際、ギュッと握った柚子の手。
付き合っていた頃と変わらない、小さく柔らかく。
暖かい手だった。
柚子もキュッと、握り返してくれた気がした。