【完】向こう側の白鳥。
柚子はいつから知っていた?
とても非道な、俺の行動を。
とても残酷な、俺の言葉を。
「一ノ宮先輩……?」
こんなにも小さい体に、どれだけの不安と傷を、抱え込ませてしまったのだろうか、俺は。
……そう思えば、俺なんかは柚子に近づかないべきなのかも知れない。
でもそれは、俺が耐え切れなくて。
結局は、柚子を傷つけてしまう結果を招く。
「何も無いよ。」
微笑んで、柚子の頭を撫でた。
柚子は目を閉じて、少しだけ幸せそうにそれを受け入れる。
心臓がドキッと、高鳴る。
その手が震えていたことに……、柚子は気づいたかな?