【完】向こう側の白鳥。
「ふぇっ、ゆ、ず、ちゃぁ……っ。」
午前八時の通学路。
周りを気にせず声を上げて、菜子ちゃんは泣き始めた。
周りは何だ何だ、と軽く見て直ぐに帰って行く。
「ごめ、んね……柚子ちゃん、ごめんね……っ!」
菜子ちゃんの涙につられて、もらい泣き。
私の目からも、透明の雫が零れ落ちた。
「私、こそ、っ……なこ、ちゃっ、……ごめん……!」
二人でお互いの体を抱きしめ合って、しばらくぶりのその感触を確かめ合う。
普段は煩いとしか言い様の無い菜子ちゃんだけど、やっぱりこんな菜子ちゃんでも私には不可欠……。
菜子ちゃんが隣にいない間は、本当に寂しかった……。