【完】向こう側の白鳥。
「描いたのは確か、柚子ちゃんと沢渡先輩が付き合った次の日だから。……この時の先輩、柚子ちゃんのことを考えていたんじゃないかな。」
そう言う菜子ちゃんの顔からは、さっきの軟らかな微笑みが消えていた。
胸がチクリと痛む。
「……もう、別れたんだよね?」
「うん……別れたよ。」
「そっか……。ごめんね、柚子ちゃん。こんな、意地悪みたいなやり方して……。」
菜子ちゃんの肩が、一層強く震える。
菜子ちゃんのいない登下校
菜子ちゃんのいない昼休み
菜子ちゃんのいない部活
菜子ちゃんのいない休日
今思えば本当に、菜子ちゃんがいなくて寂しかった。