【完】向こう側の白鳥。
私は忘れていた。
そう、お姉ちゃんと俊二は付き合ったんだ。
あれから、二人の関係についての話は聞いたことがない。
菜子ちゃんも時貴くんも、私が俊二に想いがあったことを知っていたから。
……もし、二年前の冬、お姉ちゃんが死んだあの日。
あの二人がまだ付き合っていたとしたら……。
「……一ノ宮先輩の、片想い……?」
ジャリ
靴が砂を踏む音が聞こえた。
「ぐーぜんだなあ、柚子。」
声だけで分かる。
「俊二……。」
耳や唇にピアスを空けていて、昔よりも派手でガラの悪くなった俊二が。
私の後ろにいた。