【完】向こう側の白鳥。








私は忘れていた。





そう、お姉ちゃんと俊二は付き合ったんだ。




あれから、二人の関係についての話は聞いたことがない。



菜子ちゃんも時貴くんも、私が俊二に想いがあったことを知っていたから。





……もし、二年前の冬、お姉ちゃんが死んだあの日。



あの二人がまだ付き合っていたとしたら……。





「……一ノ宮先輩の、片想い……?」






ジャリ



靴が砂を踏む音が聞こえた。





「ぐーぜんだなあ、柚子。」




声だけで分かる。





「俊二……。」





耳や唇にピアスを空けていて、昔よりも派手でガラの悪くなった俊二が。



私の後ろにいた。








< 322 / 390 >

この作品をシェア

pagetop