【完】向こう側の白鳥。
首から手が離された。
瞬間、酸素が喉を通って肺へと満ちていく。
途中で何度も酸素がつっかえて、胃液が込み上げるのを堪えた。
「今から紫苑に電話すっから、逃げんなよ? 柚子。……まぁ、逃げられねえだろうけど。」
ボタンを押して、携帯電話を耳に当てた俊二の周りには。
俊二と同じように、ピアスを沢山空けて派手な大学生の男が数人……。
呼吸はままならなくて、足は竦んだ。
体が震える。
「や……っ。」
「しゅーんじー。コイツ、喰ってもいい? めちゃ可愛いじゃん。」
そのうちの一人が俊二に近づいて、そんなことを言っているのが聞こえた。