【完】向こう側の白鳥。








“喰う”。



その言葉の意味が分からないほど、私は子供じゃない。



いっそのこと、分からない子供の方が良かったかも知れない。




分からなければ、今の言葉を聞いて涙を流すことも無かったのに。





「え、何なに。泣いてんのー? かーわいー。もしかして処女なんだー?」





さっき俊二と話していた男が近寄って来て、私の頬に触れた。




払い退けたいけれど、体が震えて上手く起動しない。



それを良いことに、男の手は頬から首へと移る。




さっき俊二に絞められたところを、クッと軽く圧された。





「ヒッ。」と、呻き声なのか泣き声なのか、よく分からない声が出た。








< 327 / 390 >

この作品をシェア

pagetop