【完】向こう側の白鳥。
「あーあ、軽く痣になってんじゃん。俊二やりすぎー。」
「うるせえぞ、康稀! 今から電話だって言ってんだろ!」
「うるさいのはどっちだか……。ね?」
康稀と呼ばれた男はそう言って、私と目を合わせて微笑んだ。
首から手が離れて行く。
「ごめんねー、怖がらせて。おれ、宮本康稀(みやもと やすき)。確か柚子ちゃん……、だっけ?」
確かにこの人も、俊二や他の人のように派手で怖い。
だけどどこか雰囲気は柔らかくて、この恐怖の中にある太陽みたいな人だと思った。
「う、ん……。」
少しだけ落ち着いて、頷いた。
すると男……康稀さんはポンポンと私の頭を撫でる。