【完】向こう側の白鳥。








そのことを知っていながら、オレに梅芽を手放すという選択は無かった。





「半年付き合っていたんだ。……梅芽はオレが柚子を想っていることを、知っていた。知っていながら……。」




「俊二……お姉ちゃんに、惹かれたんだね……。」





梅芽が死んで二年。


まだ、頭に残っている。



アイツの甘い声が。





『俊二、学食何食べる?』



『来週の日曜、二人で映画見に行こうよ。』



『わたしが、わたしが傍にいてあげるから……。』



『しゅーんじ、好き!』





離れない、梅芽の声。





「嘘……俊二が、泣いてる!?」



「あんなにも冷淡だった奴が……。」





うっせえ……菜子、時貴。








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