【完】向こう側の白鳥。
二年前については、結構複雑になっていた。
私が菜子ちゃんから聞かされたあの日から、お姉ちゃんはずっと俊二で付き合っていて。
私の思ってしまった通り、一ノ宮先輩の片想いだった。
両想いに見えてしまったのは、先輩が度々話しかけては俊二から奪おうとしてたから。
それでも、何度か振られたらしい。
『わたしは俊二が好きなの。』
お姉ちゃんらしい、真っ直ぐな言葉。
あの日は、確かに事故だった。
相手の居眠り運転で、お姉ちゃんは被害者。
でもあの日以来、一ノ宮先輩は自分を責め続けていた。
その日はお姉ちゃんと俊二が喧嘩してしまって。
泣くお姉ちゃんを黙って見てることが出来ずに、半ば勢いに任せてキスをした。
そのせいでお姉ちゃんは先輩から逃げ出して、その何十メートル先で……。