【完】向こう側の白鳥。
思い出すのは辛いけれど、ちゃんと覚えている。
お葬式、今から焼かれてしまうというのに、お姉ちゃんは笑っていた。
少し寂しそうには感じたけれど、これから天国に逝く人の顔をしていた。
絶対、お姉ちゃんは先輩も俊二も恨んでいない。
きっと、お姉ちゃんなら……。
「わたしに罪を感じるぐらいなら、この世で幸せに生きて。」
「……!!」
お姉ちゃんは、本当幸せ者だ。
死んでしまってからも、色んな人に想われているんだから。
…………だけど。
「一ノ宮先輩、余所見しないで下さいね。私はずっと先輩が好きで、先輩もずっと私が好きでいて下さい。」
この世にたった一人の、
“一ノ宮紫苑”だけはあげない。