【完】向こう側の白鳥。
side 白鳥柚子
――暖かい春の日差し。
まだほんのり寒さの残る、柔らかい風。
「行ってきます、お姉ちゃん。」
お気に入りの、いつかの白い帽子を被って。
お姉ちゃんの形見、白の髪飾りと鞄を手に持つ。
バタン
三月三十一日。
春の日。
「あれー、柚子ちゃん。オシャレしてる! もしかして、今から一ノ宮先輩とデート?」
「ま、まあ……。……そういう菜子ちゃんこそ、今から沢渡先輩とデート?」
「う、そうなの、かな……。」
何故か無性に照れてしまい。
朝の眩しさに照らされながら、二人でもじもじ。
菜子ちゃんはまだしも、私と先輩の場合、付き合ってからもう何ヶ月も経つのにね。