【完】向こう側の白鳥。








美術部部長の、一ノ宮紫苑先輩……。





「あたしじゃ駄目ですか? あたし、先輩に好かれるように頑張りますから……!」



「悪いけど。」





女子生徒の声だけが響いていた廊下に、一ノ宮先輩の凛とした声が響く。





廊下がしんと静まりかえって、聞いてる私までもがドキドキした。





「……俺、好きな人いるから。」





好きな人……?



一ノ宮先輩の、好きな人……。





『にしても先輩、絶対柚子ちゃんのこと好きだと思うのになぁ。』





頬が熱を持った。





違う、違う……私じゃない……。





そう思うも、昨日の菜子ちゃんの言葉が離れなくて、顔はどんどん熱くなる。








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