【完】向こう側の白鳥。
そして柚の模様の隣に咲く、紫の花。
「柚子、好き。」
きっとその花は、一ノ宮紫苑の“紫”。
「わた、わたし、も……っ、私も好き、ですっ……!」
一ノ宮先輩は毒牙のように、優しく微笑んで。
「柚子が高校卒業して、俺が大学を卒業したら……。」
繋いでいた手が離れる。
左手の薬指を取られ、冷たい何かを嵌められた。
「俺と、結婚してくれませんか。」
見なくても分かる、そんなもの。
「うぅっ、は、い……っ!!」
「これは婚約指輪。……四年後、柚子を一ノ宮家に迎える証。」
再び繋がれた手を合図に。
私はソッと目を閉じた。
唇に感じる、大好きな人の甘い温もり。
もう向こう側じゃない。
先輩は隣にいる。