【完】向こう側の白鳥。
周りの囃し立てる声なんて気にせず。
ただ優しく強く、私を抱きしめてキスを交わした。
「愛してる、柚子。」
お姉ちゃんは私の憧れ。
いつでも優雅で端麗で美しくて。
私がお姉ちゃんに勝るものなんて、何も無い。
でも、それでいいんだ。
だって、現実(いま)を生きていて分かる。
お姉ちゃんにはお姉ちゃんを愛してくれている人がいて。
私には私を愛してくれている人がいる。
それだけで、十分な幸せだ。
「わ、私だって愛してます。」
生きていて思うことが沢山あれば、お姉ちゃんに伝えたいことも沢山あるんだけど。
何より今、世界中に伝えたいのは。
「今、ものすごく幸せだよ……。」
そんな些細な言葉。
鞄の中にある白い髪飾りが、
シャランと揺れた気がした。
【END】