【完】向こう側の白鳥。
裁縫も嫌いじゃない私は、よく自分で服を作ったりしていた。
今描くのも、新しい夏服のデザイン。
もちろん、自分用。
「今回のデザインも可愛い……! 良いなぁ、ワンピース?」
「うん。」
絵を覗いてきた菜子ちゃんの言葉に、少しいい気分。
あんまり着ないタイプだけど、ここはフリルにしよう。
そっちのが絶対いい。
自問自答を繰り返しながら、私は腕を進めていく。
このときだけ、私は無心になれる。
悲しいことも忘れられる。
「紫苑に近づくなよ。」
……忘れられる、はずなのに。
ふと片隅では、沢渡先輩の言葉が頭を離れなかった。