【完】向こう側の白鳥。








そのときはまだ、先輩の名前も学年も知らなくて。



ただただ、綺麗な人ってだけの認識。



でも制服が同じで、少しだけ嬉しく思った。





……今となっては絶対思わないけど。








私が一ノ宮先輩の名前を知ったのは、そのあとの入学式。





在校生代表として、彼は舞台の上に立っていて。



凛々しい声で、淡々と言葉を繋ぐ先輩。





「――良き高校生活を三年間、この平沢高校で歩んでいって下さい。3年1組、一ノ宮紫苑。」





その祝辞は決して、一ノ宮先輩が本当に心から思ってるものではない。



新入生を歓迎する為の、表面の言葉。





わかってても、彼の言葉には引き付けられる何かがあった。








< 51 / 390 >

この作品をシェア

pagetop