【完】向こう側の白鳥。








次に私が先輩と顔を合わせたのは美術部で。





始業式でも顔は見れたのだけど、それは遠目で。



きっと先輩は私に気づかなかった。





お互いが顔を合わせたのは、四月の中旬に入って、体験入部の期間が過ぎてから。



体験入部の間、一ノ宮先輩は一度も部活に来なかった。





だから部活の初日。





先輩が美術部と知ったときは、部員全員が目を丸くした。



そして、一ノ宮先輩も。





「君……、誰……?」





初日、私が先輩に掛けられた言葉だ。





「し、白鳥柚子です……。」



「白鳥……。」





そう。





その日を境に、一ノ宮先輩は私を見てくるようになった。








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