【完】向こう側の白鳥。
目はいつだって悲しそうで切ない。
儚いとも言える。
今にも崩れてしまいそうな一ノ宮先輩のグレーの瞳は、いつも私を見てきた。
その目が私は嫌い。
悲しそうで、切ない瞳。
私を見てるのに。
何故か、その瞳は……。
私以外の誰かを、見てるように思えるから……。
まるでそれは、初めて先輩を見た日のよう。
先輩は道路の向こう側にいて。
私は先輩を見ている。
先輩も私を見ている。
……いや、先輩が見ているのは私じゃない。
私の後ろにいる、誰かを見てる。
私と同じように信号を待つ、誰かを……。
……切なげに、見てる。