【完】向こう側の白鳥。
「白鳥さん。」
「え?」
五月、最初の週。
急に名前を呼ばれ顔をあげる。
「六時半だけど、まだ帰らない?」
私を呼んだのは、まさかの一ノ宮先輩だった。
「えっ、もう六時半!?」
先輩に言われ、部室内を見渡すけど……。
基本的、文化部は六時までと決まっていて。
部員は私と先輩を除いて、誰一人いなかった。
「や、やばいっ、夕飯……。」
いつも五時半までには帰るようにしてるのに……!
慌ててキャンバスや筆記用具を片付ける。
用具を無理矢理鞄に詰めて、斜め書きをしたときに汚れた手をウェットティッシュで手早く拭く。