【完】向こう側の白鳥。
「い、一ノ宮先輩っ!?」
世間で言えば、抱擁と呼ばれるその行為。
もっと簡単に言って、私は先輩に抱きしめられてる。
……一ノ宮先輩に!?
「はっ、離して下さい!!」
次第に熱くなる頬。
今すぐ離れたいのに、見た目より何倍も力強い先輩の腕は私を離してはくれない。
「一ノ宮先輩っ!!」
「……悪い。」
更にギュッと力が込められる腕。
目の前にあるのは、私達女子とは全然違う厚い胸板。
「わかってる……わかってるんだ。」
わかってるって、何が……?
「本当悪い……今だけ、今だけでいいから……。」