【完】向こう側の白鳥。








だんだんと、頬の熱が下がってゆくのがわかる。





一ノ宮先輩の腕は震えていて……。



今、彼がいつもの悲しい目をしてるのも、私にはわかった……。





「……先輩……。」





一ノ宮先輩……貴方は一体、誰を見てるのですか……?





震えている先輩の背中に、ソッと両腕を回した。





「苦しいときは、泣けばいいですよ。」





私も昔、お姉ちゃんにそう教えられましたから……。





「……ははっ……白鳥さん達には、敵わないなぁ……っ。」





きっと、一ノ宮先輩は気づいていない。





今先輩は私を、“白鳥さん”じゃなく、“白鳥さん達”とまとめて言ったことに。








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