【完】向こう側の白鳥。
お金は食費や今月の燃費などをちゃんと考えて、妥当な額だけを財布に入れた。
まず私はどこに行くとか全く知らないわけだから、最低限でもどれだけ必要なのか、私には想像がつかない。
正直、あまり高いところには行きたくないんだけど……。
用意の出来た頃、長針は十一を指す。
まだインターホンは鳴らない。
リビングに下りた私は机の上にある、いつもの髪飾りを頭につけた。
黄色と白の可愛らしい花模様。
私には勿体ないぐらいの。
そこでインターホンが鳴って、私は一度置いた鞄を再び手に取った。
「いってきます。」
五月三日、午前十時。