【完】向こう側の白鳥。
「……ありがと。」
先輩は小さく微笑んで、私の手を取った。
ドクンと、心臓が高鳴る。
「行こ。」
手の平を合わせただけの繋がり。
――……こんなのまるで、本当のデートみたい……。
「どこ行くのですか?」
手を引かれるままに歩き出せば、先輩は私を街へと連れ出した。
ショッピングモールやデパート、雑貨店などの店が集中しているこの辺り。
私も何度か、菜子ちゃんと二人で来たことがあるけど……。
一ノ宮先輩はここまで私を連れて来て、どこに行く気なんだろ……?
そんな私の気も知らずに、先輩はグングンと進んでいく。