【完】向こう側の白鳥。
体が傾く感覚に私は振り返る。
「一ノ宮先輩?」
私が呼べば先輩はハッとしたような顔になり、途端に微笑んだ。
「何?」
私はここに来れて良かったって思うけど……。
もしかして一ノ宮先輩は、来たくなかったのかな……。
寂しそうな顔が一瞬、見えてしまった。
「先輩、つまらないですか?」
私だけが楽しむなんて嫌。
せっかくなんだから、先輩にも楽しんでほしい。
「大丈夫。……絵も、白鳥さん見てるのも楽しい。」
「えっ、私ですか……?」
「ん。」
先輩はそう言ったけど、私は何だか信じられなくて……。
そのあとの展覧は、何故だか思ったより楽しめなかった。