【完】向こう側の白鳥。
値段も、高校生の私が買えるものじゃなかったし……。
「先輩は何も買わないのですか?」
「特に欲しいもの無いし、買わない。」
それから適当に店内を見て回り。
一ノ宮先輩もずっと、そんな私に付き合ってくれた。
周りの話なんかだと、彼氏とか男の人は買い物を嫌うから、彼女が買い物する間は外で待つことが多いって聞くけど……。
「先輩はずっと、傍にいてくれたな……。」
少し前を歩く、先輩の広い背中。
私の声に気づいた先輩が振り返った。
「今、何か言った?」
さっきの言葉を、面と向かっては言えなかった。