【完】向こう側の白鳥。
お姉ちゃんなら、一ノ宮先輩に相応しい容姿と態度で隣を歩けるのだろう。
お姉ちゃんなら……。
……まるで私、お姉ちゃんに嫉妬してる……。
「……楽しくなかった? 今日。」
そんなとき、繋いでいた手に微かな力が込められた。
ハッと世界が引き戻される。
「そ、そんなことないです! 今日は本当に楽しかった……。」
「……ならよかった。最初の美術館以外、白鳥さんに任せてしまったし、退屈させたか心配だった。」
先輩は繋いでいた手を離す。
柄にもなく、空気に触れる手の平が寂しいと感じた。
突然にも、先輩は掛けていたショルダーの鞄から袋を取り出した。