【完】向こう側の白鳥。
「形、崩れてないといいけど……。」
袋から顔を出したのは、ショッピングモールで私が見ていた帽子……。
「え……?」
「悪い、ちょっと外す。」
先輩の右手が私の髪に伸ばされ、
……カチャッ、という音と共に、お姉ちゃんの髪飾りが外された。
そしてその代わりに、私の頭に乗せられたあの帽子……。
「……ん、よく似合ってる。」
頬が熱を持つ。
まるで観察をするように、先輩に見つめられて。
帽子で、きっと赤い顔を隠した。
この帽子、高かったのに。
いくら恋人みたいなことをしても、本当の恋人じゃないのに。