【完】向こう側の白鳥。








「俺の好きな人は……。」





一ノ宮先輩の、好きな人になりたい……。





「……いないよ。」





「俺に、好きな人なんていない。」










直ぐに嘘だと気づいた。



好きな人がいないだなんて、絶対嘘。





だって先輩の目は、恋してる人の目だった。





恋をしてるお姉ちゃんと同じ目をしていたから、わかる。



相手を心から思いやり、人を愛おしく想う目。





一ノ宮先輩は恋してる。





じゃあどうして、それを隠したの?



「秘密。」とでも、はぐらかしてくれればいいのに。





私が、誰かに言い回すような人にでも見えたの?



胸が痛い。





先輩と別れて直ぐ、自室のベッドへとダイブ。








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