蝶は金魚と恋をする




一琉が意地悪な質問をあえてぶつけて、うっと押し黙った秋光さんだったけど、私をまっすぐ見つめると柔らかく微笑んだ。


「うまいよ。一琉の方には惚れ薬でも仕込んだか?」


「本当に次には毒仕込みますよ秋光さん」


私が睨み返すと、秋光さんはクスクスと笑い出す。


「そんなん入れなくても、凪自体が惚れ薬だからね~」


一琉まで馬鹿な事を言い出すし、呆れた顔で食べかけのおにぎりに手を伸ばして勢いよくかぶりついた。


でも、こんなに賑やかな食事はいつぶりだろう?


騒がしいけど悪くない。


一琉が迷い込んだ後に秋光さんと言う騒がしさが加わった朝だった。
< 25 / 90 >

この作品をシェア

pagetop