蝶は金魚と恋をする
「凪…、目、閉じて……」
「……っ……」
「イイコ……、キスする…ね」
ヤバイ……、しっかり想像して一琉のキスを思いだしている私はかなりイヤラシイ子な気がする。
それでもしっかり目を閉じてキスしている感覚に陥って、一琉を感じる自分は嫌いじゃない。
愛おしくて涙がでそうなくらい。
「キス…出来た?」
一琉の声が未だ熱に溺れた頭に響く。
キュッと締め付けられた胸が痛いくらいだ。
「で…きた……」
「ふふっ、凪のエ~ッチ」
「な、一琉が初めたんじゃん!」
「従順に応えてくれるなんて思わなかった~」
「ちっ…、もう、一琉なんて知らない」
かなり赤い顔でお風呂に向かってお湯に浸かると、一琉がクスクス笑いでお湯に浸かる音がした。
同じお湯に浸かる。
約束は果たした、うん。
「凪~、怒らないでよ~」
知らないよ。
「凪ちゃ~ん?」
聞こえない。
「返事しないなら…。覗くよ」
「何よ?」
「ははっ、やっぱ見るのはダメかぁ」
「当たり前」
誰かに見せるために発育したわけじゃないし。
ましてや触らせるつもりで発育したわけじゃない。
でも……一琉といるという事はいつかは…?
そう思った瞬間に朝の出来事を思いだして心臓が乱れた。
あんな大人のキスをされて胸を触られる。
許容範囲以上の行為に恐くて泣いてしまったけど、どこかで一琉だからいいと思っていたと思う。
どうかしてる。
バシャリとお湯で顔を洗って、自分の正気と思えない考えをかき消していると。
「凪~、今ね、凪を抱きしめたから」
「はっ?」
「今ね、後ろから抱きしめて首にキスしてる~」
まだやるかこの男!?
「セクハラやめてくださーい」
「あっ、ゴメン、胸触っちゃった」
「き、聞こえない!」
「今ね、凪の金魚に触れてる……」
ゾクリとした。
本当に触られている時の感覚を思い出して、今まさに触られているようで。
後ろには誰もいないのに、ただの言葉なのに…。