蝶は金魚と恋をする
「………凪、ごめん。キスさせて…」
耳元に囁かれた言葉にゾクリゾクリと鳥肌が立って、一琉の甘いおねだりの様な言葉に、私は抗う方法を知らない。
抱き寄せたまま向きを一琉の方へ直されて、かなり紅潮しているであろう顔を上に向かされる。
両手で包みこまれた頬が更に熱くて、くらりと視界が歪む中、一琉だけがクリアに見えた。
「本当……凪は誰よりも可愛いよね…」
なんて、魅力……。
妖艶な…悪魔…。
そんな感想を持った直後に唇を重ねられた。
一琉の唇は……気持ちいい。
ぐらりぐらりと目がまわって、自分が逆上せているのだと気づく前に意識を手放した。
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キスをしている合間に凪の体の力が抜けた。
ぐらりとしなった体を抱き寄せる。
本来白く滑るような肌であるそれは、逆上せた事で見事に紅潮して熱を持っていた。
不意に凪の体に視線が行って、生殺し的な状況に苦笑いを浮かべた。
目蓋をしっかり閉じた凪の頬に優しく触れる。
「凪……甘えて泣いて……貪欲になって……」
俺は全てを受け入れて、甘やかして、常に傍に凪を置いておきたいんだから……。
昨日会ったばかりだというのにどうかしてる。
でも、抑えきれない想いが込み上げて、今までの俺と全部引き変えてもいいくらい凪が欲しい。
陳腐だけどさ…。
「コレが恋…か…」
だとしたら、遅すぎる初恋だな。と、クスリと笑った。