蝶は金魚と恋をする
泣きたくなる感情を抑えて、近くにあったバスタオルを掴むと体を隠した。
「さ、削除して!」
「えっ、嫌。俺の凪コレクションの記念すべき第一番だもん」
「変なコレクション作らないでよ!!ってか、私!何で裸なわけ!?」
その疑問を投げかけると、一琉は少し考えてからニヤリと笑った。
意地悪な色をチラチラと光らせた目が私を見つめる。
「へぇ、言わせたいの?昨日の事……」
「や、やっぱいい。……知りたくないかも…」
「凪の体って癖になりそうだよね。吸い付いて滑らかで、抱きしめたら離せない…」
一琉の悪魔の囁きの様な言葉を紡ぐ唇から赤い舌が覗いて唇を舐める。
扇情的な光景にゾクリと何かが背中を駆け上り、体の奥の手の及ばぬ所が熱くなる。
「凪~、おいで?」
ばさり布団をはいで自分の隣にくる事を強要する言葉と視線。
朝に似つかわしくない光景と空気に頭が混乱してしまう。
「い、行かない…」
「クスッ、何かいやらしい誤解してる?」
くっ……。
多分、絶対!誤解とかじゃないのに、あえての言葉遊びで私を翻弄する一琉は性質が悪すぎる。
「俺の限界が来る前に……来て、…凪」
再度の強要。
次は無い。
機嫌を損ねた一琉ほど危険なものは無い。
渋々じりじりと距離を縮めると満足そうに口元を緩めた一琉。
さすがに自ら布団に舞い戻るのを躊躇うと、手首を引かれて引きずりこまれた。
暖かい布団の感触と一琉の肌に包まれる。
「遅い……」
「も、戻るつもり無かったもん…」
「俺、凪の肌の温もりないと生きていけない…」
「25年生きてきたんでしょうが!?」
「うん、…でも、凪は麻薬だ。依存性のかなり強いね」
言うなりバスタオルは、邪魔だと言われんばかりの扱いを受け剥がされる。
鬼畜な痴漢!
瞬時に顔が熱くなり、伴って顔が赤い筈だ。
一琉が更に体を密着させてきて、私の腰に手を回して金魚に触れる。
ゾクリと身悶えると、一琉がクスリと笑ってきた。
「何?ここが凪の性感帯?」
「知らないよ……」
「ね、俺の…触って……」
耳朶を甘噛みされて言われた言葉に頭がショートしそうになった。