蝶は金魚と恋をする
永遠の別れじゃあるまいし、どうかしてると思うのに恐いという気持ちが抑えきれない。
唇が離れた瞬間に私の口から零れたのは。
「早く……戻ってきて…ね…」
寂しさの塊の羅列。
一琉は柔らかい微笑みを私に向けると再び優しいキスを与えて離れた。
「凪、仕事でしょ?早く行かないとお祖父ちゃん待ってるんじゃない?」
その言葉に頷いて、後ろ髪引かれながらアパートを後にした。
外は今日も暑い。
昨日は2人で歩いた道のりを一人不安を抱きながら歩きだして。
一琉に依存し始めていた自分を痛感した。
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「俺の存在を忘れるくらい…、凪ちゃん弱ってたな」
秋光がポツリと呟いた言葉に小さく頷く。
凪のトラウマだから。
大切な人が帰って来ない寂しさは。
「凪の両親は……帰って来なかったらからね…」
小さい凪には赤い金魚と黒い金魚を遺して死んだ。
だから、何があっても凪に寂しい思いをさせたくない。
ずっと傍にいるためにも今は…。
「秋光……、行こうか?」
俺の表情が切り変わったのを合図に秋光も切り変わる。
「ご案内しますよ一琉様」
凪が待ってるから早く終わらせないとね……。