蝶は金魚と恋をする
「一琉な…、凪ちゃんに振られてグダグダで使い物にならねぇ」
「はっ?振った?」
「プロポーズ…、また断ったんだろ?」
あ、ああ…、そっか、朝の……。
振ったつもりは無かったんだけどな。
確かに一琉が目に見えて落ち込んでいたのは記憶にある。
本気だと言っていたし当然なのかもしれないけど、私はどう一琉を慰めればいいんだろう。
困った様に秋光さんを見つめると、秋光さんも苦笑いを私に返してその場を後にした。
朝からめまぐるしく私を取り巻く…。
いや、私と一琉をとりまく結婚の2文字に悩んで頭がバカになりそうだ。
一琉の必死なプロポーズ。
一琉の叔父さんからの牽制とアドバイス。
住む世界が違う……か。
本当に…蝶々と金魚みたいだ。
同じ世界に暮らすには、お互いに腹をくくらないといけないのかもしれない。
私にその選択が出来る?
寂しいだけで一琉を引き止めているなら、辛くても一琉と離れるべきかな?
これ以上……手遅れになる前に……。
外の雨の音が強まった。
ガラス戸にぶつかり流れていく雫を見つめてどうしようも出来ない感情に溺れて沈みそうになった。
一琉は…、今何を思ってるんだろう…。