蝶は金魚と恋をする
「今度さ、俺に和菓子つくってよ」
「・・・・・り、了解しました」
「俺餡子系大好きだから」
「は、はい。インプットしておきます・・・」
「ふっ・・・」
「・・・な、何ですか?」
普通に返していたつもりなのに、可笑しそうに小さく笑う秋光さんに視線を移すと。
耳元まで屈んでいたままだった顔がすぐ間近にあって息が止まる。
あっ・・・、この人は・・・カッコイイ・・・。
初めて男の人をそう言う風な目で見てしまった。
熱くなる胸に、追い打ちをかけるように秋光さんが意地悪な言葉を私に向けた。
「今度って事は・・・、また会うって約束なんだよ?夏希・・・」
「・・・っ・・・」
「本当・・・、お前って危なっかしい子だね・・・」
スッと、秋光さんの目が細まって、妖艶で危険な微笑みを私に向けた後に、熱く赤くなったであろう私の頬に秋光さんの指先が滑る。
もう・・・、限界だ・・・。
私の許容範囲を超えている。
ギュッと硬く目を閉じて心臓の高鳴りを押さえようとしてしまう。
だけど身体がビクリと反応した。
自分の唇に触れた感触に驚いて目を開ければ、秋光さんの指先が私の唇に触れ。
その感触を確かめるようにした後にニッと笑ってようやく身体を起こした。
正常な身長差に戻ると秋光さんの顔は遠い。
ようやく安定の距離を保った安堵に浸ると、秋光さんの爆弾は投下される。
「キスしたら気持ちよさそうな唇だな」
爆死しろってことですか?!
キスとか言う単語を男の人からぶつけられたの初めてですが。
「あっ、コレはセクハラです」
しかもセクハラって自分で言っちゃう?!
パクパクと口を開け閉めしていれば、堪え切れないように秋光さんが笑いだした。
「ははっ、悪いな。お前反応が面白いから」
「あ、秋光さんは意地悪なんですね・・・」
「俺は小学生の感覚のまんまなんだよ」
「はっ?」
からかわれている事にムスッとして。
それでも赤くなりながら見上げると、再び意地悪は投下された。
「好きな子ほど苛めたい・・・。あっ、コレは小学生というか・・・男の心理か?」
ニヤリと笑う秋光さん。
対する私は多分熟した林檎のように赤いはず。