蝶は金魚と恋をする
「・・・・一琉の・・・叔母さんに当たる人ですか?」
叔母さんって言葉がしっくりこないのは、この人が若々しく女優さんみたいだからだ。
私の言葉を聞くなり口元に弧を描き柔らかい笑みを向けるその人は、きっと一琉の叔父さんの奥さんだ。
「なんか、色々迷惑かけてるみたいでごめんなさいね・・・。うん、ウチのバカな旦那まで・・・」
あの人をバカと言いきれるこの人を尊敬しよう。
「いえ、・・・特に迷惑は・・・」
「いや、絶対に笑顔で辛辣な悪態ついて帰ったでしょ?あの綺麗な顔でかなりきつい事言う悪魔なんだから・・・」
舌打ち交じりに脳内でその姿を思い出してなのか、ムスッとした顔を見せる綺麗な人。
よく相手を理解している雰囲気から、夫婦なのだから当然なんだけど分りあってるな~。と、少しだけドキドキしてしまう。
「一琉は元気?我儘言ってない?」
「あ~、元気に我儘言ってます・・・」
そう切り返すとその人は綺麗に微笑んだ。
本当にこの人はあの人の奥さん何だろうか?
常識人に感じるその人は、一琉や叔父さんみたいに破天荒で危険な感じがする人じゃない。
でもそうか、あの人の奥さんと言う事は・・・。
駆け落ち経験者。
いったい、どういう経緯で駆け落ちとなったのか。
叔父さんも身分が高くてとか?
でも、この人は好きだけで突っ走った人なのか・・・。
ほんの2言3言交わしただけなのに、私はこの人には警戒を抱かずに一緒にいられる。
どうしよう・・・、聞いてしまおうか。
でも、初対面の人に聞いていい物なのか。
複雑な思いを抱いていたのが顔に出ていたのか、その人は困ったように微笑んでから私の顔にそっと優しく触れてきた。
ふわりと柑橘系の匂いが香る。
「・・・・ごめんね。巻きこんで・・・悩ませてるわよね?・・・普通の女の子なのにいきなり結婚とか悩むのわかるわ・・・」
何だろう、お母さんみたいだ。
お母さんが生きていたらこんな感じだろうか。
なんだか泣きたくなるような胸の熱を押さえこんで、綺麗なグリーンアイを覗きこむ。