蝶は金魚と恋をする
「・・・でも、安心した」
「えっ・・?」
「一琉がちゃんと人を好きになれて・・・。しかも、こんな可愛らしい子を」
「か、可愛らしくなんて・・・」
綺麗な人に可愛いと称賛されるのはかなり恥ずかしい。
お世辞と分っていても顔が赤くなる。
そんな様子がおかしかったのか、その人は可愛らしくクスクスと笑いだした。
「うん、私も気にいったな・・・。あなたとなら一琉は幸せになれそうだし」
「どうでしょうか・・・」
「ん?どういう意味?」
私の一言にその人は疑問顔で私を覗きこんでくる。
全ての複雑な感情をぶちまけていいのか悩むも、何となくこの人になら相談出来そうで口を開いてしまった。
「一琉と私が傍にいるって・・・いわば、駆け落ちになるんですよね?」
「・・・・ん・・・まぁ、みたいな感じかな?」
「それって・・、一琉は今までの世界を捨てるって・・・、両親を捨てるって事でしょ?・・・私は、そんな選択させたくない・・・」
つい自分の心境と重ねてしまう。
不本意で理不尽にも奪われた両親。
とても大切で、いまでも忘れられない。
悲しくて辛くて、私は寂しい日々をずっと過ごしてきたんだ。
だからこそ、一琉には後悔してほしくない。
生きているのに縁を切る様な状況に陥ってほしくないんだ。
その感情も全て吐きだすと、静かに、頷きながらその人は聞いていた。
優しく困ったように微笑んで、まるで今日あった嫌な事を離している小学生とお母さんみたいだ。
全てを打ち明けるとその人が優しく頭を撫でてくる。
柑橘系の香りと綺麗なグリーン色が癒し効果を発揮して、私の心まで癒していくみたいだった。
「一琉を・・・大事に思ってくれているのね」
「・・・一琉は・・・傍にいてくれるから・・・・」
「うん・・・、あなたの傍にいる事があのこの幸せなの」
返された言葉にまっすぐその眼を見返してしまう。
「一琉にとっての一番はね、両親や暮らしよりも今は凪ちゃんなの。それなのに・・・家の事情で望まぬ結婚や暮らしを迫られているのが現状」
そこまで言ってその人は顔を歪めた。