くたばれクリスマス
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美雪が俺と別れた後に付き合いだし、程なく結婚した相手は美雪が大学時代に世話になったという大学の講師だった。バツイチのその男は俺たちよりも18歳も年上で、身形が洒落てて、身のこなしが洗練されてて、一見上等な紳士。
美雪も付き合ってすぐに、女慣れしたヤツのスマートな誘いやエスコートに夢中になったらしい。けれど楽しかったのも付き合っていた間だけ。
外面が異様によかっただけのその男は、結婚した途端、妻になった女を束縛して自分勝手な悋気を爆発させる幼稚で最低な男に豹変した。
電話にすぐ出なかった、自分の好みとは違う髪形にした、自分好みの味付けを覚えてくれない、自分の話した事に自分が望む反応を示さなかった、自分より先に寝た、自分より後に起きた……。
そんな自分本位なくだらない理由で奴はいちいち美雪に手を上げた。前の離婚も奴のDVが原因だったらしい。
俺に助けを求めてきたその日も、美雪は外では理想的な夫を演じながらも、家では暴君に成り果てる亭主にボコボコに痛めつけられていた。
なのに俺は『今更前の男に電話してくるなんて、おまえどんだけ無神経だよ』ってせせら笑って美雪からのSOSを一蹴した。
美雪が旦那からどんな残酷で屈辱的な目に合わされているのかも知らずに。