くたばれクリスマス
* * *
「………もう昔の話だろ」
苦い気持ちを追い払うために、ひとり呟く。……窓の外は大雨だ。でもどれだけ雨が降ろうとも、俺の中の苦い記憶は洗い流せそうにもない。
「ほんとに、ひどい雨だ………」
こんな日に、わざわざイルミネーションなんてしあわせの象徴的なものを見に行こうとするなんてどうかしてる。やっぱ日を改めたほうがいいかなんて考えかけた、そのときだった。
胸ポケットの携帯が震えた。美雪からだ。
『………もしもし、巧?』
すぐに出ると、雨音と一緒に美雪の声が聞こえてくる。ちょっと長く待たせ過ぎたか。そう思って謝りの言葉を口にしようとした途端、美雪は口早に告げた。
『巧、お願い。すこしの間、何も言わずに聞いててくれる……?』
張り詰めたような緊張が携帯越しに伝わってくる。俺は相槌すら打たずに口を噤んだ。俺と美雪の間にある沈黙を、雨音が静かに埋めていく。
『今日、誘ってくれてありがとう。……けどね、やっぱり私は行けない。だからこのまま帰ります』
美雪は電話越しに静かに話し始めた。