金魚の群れ
夏が過ぎ、学校の授業が始まればバイトに明け暮れていた日々に彩が添えられる。
「いや、それ絶対に恋でしょう。ああ、やっとかりんにも春が来たのね」
ガシッと私の両手をつかむと、嬉しそうに何度もシェイクする。大学に入ってからできた友達『松永享子』は自分のことのように喜んでいる。
「え?これって恋なの?」
訳も分からずに、この夏にあったことを話せば、大半は辻堂さんのことになってしまうのは、それぐらい私が辻堂さんのことを見ているということで…。
「だって、今まで合コンに誘ってもいい返事しないし、男の人に興味なさそうにしていたのに、なに、夏休み開けたらその男の人のことばっかりで。もう、これって絶対に恋だって」
確かに、中学、高校と女子校で、大学に至っても共学とはいえ女子の比率が高い私の周り。でも彼氏のいる子とかも多くって、それがうらやましいと思わないこともなかったけれど、こんな口下手の女の子と付き合っても楽しくもないだろうと思い、積極的に男の人に接することもしなかった。
「あー、年上の人かぁ。いいね、いいね」
人の話なのに、勝手に盛り上がっている享子を見ると、そうなのかな?という気持ちにもなってくる。
恋というよりは、野菜嫌いの子どもを見守る母親の心境だけど。
今日は辻堂さんの嫌いな野菜はないかなとか、おいしく食べているかなとか…。
でも、嬉しそうにデザートを食べる姿にはちょっとだけドキドキするけれど。
「それで、バイトはそのまま続けるんでしょ?」
「うん」
「わー、なんか進展あったら教えてよね」
「はは」
進展なんてきっとない。
だって、隔てられた世界だもの。
切り取ったように四角い枠の向こう側は華やいでいて、私はきっと眺めているだけ。
楽しそうに笑う人たちを見ているだけ。
「いや、それ絶対に恋でしょう。ああ、やっとかりんにも春が来たのね」
ガシッと私の両手をつかむと、嬉しそうに何度もシェイクする。大学に入ってからできた友達『松永享子』は自分のことのように喜んでいる。
「え?これって恋なの?」
訳も分からずに、この夏にあったことを話せば、大半は辻堂さんのことになってしまうのは、それぐらい私が辻堂さんのことを見ているということで…。
「だって、今まで合コンに誘ってもいい返事しないし、男の人に興味なさそうにしていたのに、なに、夏休み開けたらその男の人のことばっかりで。もう、これって絶対に恋だって」
確かに、中学、高校と女子校で、大学に至っても共学とはいえ女子の比率が高い私の周り。でも彼氏のいる子とかも多くって、それがうらやましいと思わないこともなかったけれど、こんな口下手の女の子と付き合っても楽しくもないだろうと思い、積極的に男の人に接することもしなかった。
「あー、年上の人かぁ。いいね、いいね」
人の話なのに、勝手に盛り上がっている享子を見ると、そうなのかな?という気持ちにもなってくる。
恋というよりは、野菜嫌いの子どもを見守る母親の心境だけど。
今日は辻堂さんの嫌いな野菜はないかなとか、おいしく食べているかなとか…。
でも、嬉しそうにデザートを食べる姿にはちょっとだけドキドキするけれど。
「それで、バイトはそのまま続けるんでしょ?」
「うん」
「わー、なんか進展あったら教えてよね」
「はは」
進展なんてきっとない。
だって、隔てられた世界だもの。
切り取ったように四角い枠の向こう側は華やいでいて、私はきっと眺めているだけ。
楽しそうに笑う人たちを見ているだけ。