幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「何してんだ、こんなところで」
「ふ、副長!じゃなくて、参謀!」
「“副長”でかまわねえよ。むしろそう呼べ」
昼間はきちっとした洋装の副長が、今はゆったりとした着物を着て立っていた。
い、いつの間に!?
「部屋に帰ったらいねえから、どこにいったのかと思った」
「す、すみません……」
慌てて頬をつたっていた涙をぬぐうと、副長は懐から手ぬぐいを差し出した。
「鼻水も出てるぞ」
「うそっ」
おおう……なんて恥ずかしいんだ。
「どうしたんだよ。総司と喧嘩でもしたのか?あいつは眠ってたようだが」
「ケンカ……ではないですけど」
少し考えた末、あたしは副長に昼間のことを話すことにした。
総司の体のこと、もののけになる気がないことは、副長には知っておいてもらった方がいいだろう。
話を聞いた副長は、腕を組んでため息をついた。
「……それで、ここで一人でしょぼくれてたわけか」
「はい……」
さて、何て言って笑われるだろう。
いや、バカにされる?
副長、うだうだ悩んでる人が嫌いだもんね。