幕末オオカミ 第三部 夢想散華編


「何してんだ、こんなところで」

「ふ、副長!じゃなくて、参謀!」

「“副長”でかまわねえよ。むしろそう呼べ」


昼間はきちっとした洋装の副長が、今はゆったりとした着物を着て立っていた。

い、いつの間に!?


「部屋に帰ったらいねえから、どこにいったのかと思った」

「す、すみません……」


慌てて頬をつたっていた涙をぬぐうと、副長は懐から手ぬぐいを差し出した。


「鼻水も出てるぞ」

「うそっ」


おおう……なんて恥ずかしいんだ。


「どうしたんだよ。総司と喧嘩でもしたのか?あいつは眠ってたようだが」

「ケンカ……ではないですけど」


少し考えた末、あたしは副長に昼間のことを話すことにした。

総司の体のこと、もののけになる気がないことは、副長には知っておいてもらった方がいいだろう。


話を聞いた副長は、腕を組んでため息をついた。


「……それで、ここで一人でしょぼくれてたわけか」

「はい……」


さて、何て言って笑われるだろう。

いや、バカにされる?

副長、うだうだ悩んでる人が嫌いだもんね。


< 104 / 365 >

この作品をシェア

pagetop