幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
宇都宮城の戦い
翌日、旧幕府軍は北上を開始。
大鳥隊と土方隊に別れ、それぞれ日光を目指す。
もちろんあたしたちと新撰組は、土方隊に編入され、蓼沼村の満福寺に陣を置いた。
「大鳥隊は小山宿で彦根藩を退けたみたいだ。学者みたいなひょろっとした奴だったが、やるじゃねえか」
副長はあたしと総司、平助くんと昔からの仲間が集まった部屋で、にやりと笑った。
「で、俺たちはどうするのさ、土方さん」
「俺たちは、宇都宮城を奪取する」
副長は大鳥隊からの手紙をしまい、代わりに地図を取り出し、畳の上に置いた。
ろうそくの灯りがぼんやりとそれを照らす。
日光までの途中にある宇都宮城は、今は新政府軍の支配下にある。
「敵がいる街道は避け、目立たない道から城下へ入り、夜明けに急襲をかける」
「夜明け……ですか」
「ああ。どうやら敵は数でも装備でも、俺たちに劣るらしい。
日が暮れる前にカタをつけてやるさ」
たしかに、今の幕府軍はフランスから輸入した新型の銃を持っている。
鳥羽伏見や甲州勝沼で敗走した新撰組とは、違う戦いができるはずだ。