幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「日が暮れる前、ですか。じゃあ俺たちは普通に刀で参戦すればいいんですね?」
総司が乗り出すと、副長はそのおでこをしたたかに打った。
ぺちんと、良い音がする。
「アホ。病人は陰で見てやがれ」
「なっ……」
「もし戦いが長引いて、夜にもののけが出てきたらその時は頼む。平助も楓も、そのように心得ておいてくれ」
副長はあたしの瞳を見つめた。
きっと彼は総司の体調を気遣い、なるべく戦わせないようにと思ってくれているんだろう。
「はい」
「ちょっと待ってください、土方さん。
あなた一人を行かせるなんて、俺にはできない」
総司が眉間にシワを寄せ、怒ったように怒鳴る。
「一人じゃねえよ。2千人の味方がいる」
「でも……俺はあなたの傍で働きたいんです。もののけはいなくても、岡崎一族がいるかもしれない。
常人から外れた能力を持った彼らと対峙するなら、普通の人間より俺たちの方が適任でしょう」