幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「む……」
総司の言葉を聞き、副長は腕を組んで口を結んでしまった。
そういえば甲府城にも、岡崎一族が結界を張ったと斉藤先生が言っていたっけ。
あのときは結局、城にたどり着く前に敗走しちゃったけど。
岡崎一族は、槐みたいな普通の忍から、陽炎みたいな幻術を使える者までいる。
つまり、どんな能力を持った敵が潜んでいるかわからない。
「忘れてたぜ。やっかいな一族を敵に回しちまったもんだ」
副長は苦笑交じりに、あたしを見てため息をついた。
うう、すみません……。
「ならば、お前たちは前線には出ず、最後尾で隠れていろ。
もし、万が一もののけや岡崎の者がいたら、戦いに参加してくれ。決して無理はするな」
「はい」
副長の妥協案に、総司も妥協してうなずいた。
本当は副長のすぐそばにいて、支えたいんだよね。
局長を失った今、副長は一人で新撰組と旧幕府軍を背負っているのだから。