幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「先生……!生きてたんですね。死んだなんて、嘘だったんだ」
俺は遠慮なく、近藤先生の広い胸に抱きついた。
その腕はがっしりと、小さくなった俺を支えてくれる。
「いやあ、すまん。俺が死んでしまったのは本当だよ」
「え……」
「私が証人だよ」
もう一人、別の方から声がした。
竹刀がかけられている壁際を向くと、そこにいたのは山南さんだった。
「山南さん!」
ああ……覚えている。
山南さんは、もののけになった自分を許せず、死を選んだんだ。
「そんな……」
やっぱり、こっちが夢だったんだ。
なんだよ。二人が死んでしまったのが夢だったら、良かったのに。
がっくりと肩を落とした俺を、近藤先生がしゃがんでのぞきこむ。
「子供の頃のお前に戻ってしまったような姿を見て、心配で来たんだよ」
「子供の頃の?」