幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「じ……総司?」
「ああ?」
高い声に呼ばれて目を開ける。
すると、息がかかりそうなほど近くに、心配そうな楓の顔があった。
「ああ、よかった。
近藤先生ー!って泣きながら手を伸ばしてうなされてるから、とうとうお迎えが来たのかと思ったよぉ……」
楓はそばにへたり込むと、そのまましくしくと泣きだしてしまった。
「いや……お迎えかと思ったんだが、むしろ追い返された」
「は?」
「先生さ……楽しかったって。何の後悔もないんだって言って……笑ってた」
楓は何がなんだかわからないと言ったような顔で、俺をまじまじと見つめた。
涙をためて、鼻水がちょっと出ているその顔は、なんともマヌケ。
「はは……」
マヌケなこいつがいるから、俺はまた笑えるんだ。
生きていける……。
「な、なに?とうとう頭がヤバくなっちゃった?」
「というか、開き直った」
「ええ?」